共同研究成果：ポリオキソメタレート配位子を用いた”金属カチオン接着剤戦略”による常磁性異種金属多核構造の拡張（A02定金ら）

A Cationic Metal Glue Strategy for Expanding Paramagnetic Hetero-Multinuclear Metal–Oxo Clusters within Polyoxometalate Ligands

Takuo Minato, Masahiro Sadakane

大きな異種金属多核構造を精密に構造設計することは、大きな基底スピンや多電子酸化還元特性を制御し、単分子磁石 (SMM)、分子磁気冷媒、効率的な酸化還元触媒として応用するために重要である。しかし、従来型の金属カチオンと配位子の一段階縮合反応を用いた場合、最終生成物の構造予測は困難であった。本研究では欠損型ポリオキソメタレート (POM)を剛直な無機多座配位子として使用し、異種金属多核構造のサイズと核数を拡張させる「金属カチオン接着剤戦略」の提案と実証を行った。本手法により、これまでに報告されたPOMにおいて最大の常磁性異種金属多核構造である{(FeMn4)Mn2Ln2(FeMn4)} (Ln = Gd, Tb, Dy, Lu)の合成とSMM特性の制御に成功した。これらの構造は、MnおよびLnカチオンを接着剤として、{FeMn4}同士を繋げることによる予測可能な方法で合成できたことから、「金属カチオン接着剤戦略」はさらに大きな異種金属多核構造を原子レベルで正確かつ効果的に構築するための強力なツールとして利用できると考えられる。

Angewandte Chemie International Edition, 2023, e20230946. DOI: 10.1002/anie.202309469